デジタル庁が設立されて今年制定された「デジタルの日」。せっかく初のデジタルの日だし、デジタル分野で生きてる人間としては何かやりたいなということで、みんなが日頃考えていることや疑問を持っていること、誰かと話してみたいことをとりあげてお話ししました。
テーマ
テーマは「大人のデジタル子どもデジタル」。デジタル庁が掲げる「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を」に同調して、大人も子どもも私たちみんなに関係する「デジタル」を軸に誰もが感じる素朴な疑問について以下のようなテーマで一緒にお話ししていただきました。
10月10日(日)
デジタル反対派、アンチデジタル! お話してくださった方:石原さん
この回では「デジタル反対派、アンチデジタル!」をテーマに石原さんとお話しました。
デジタルの日の企画ですが、デジタルに対して肯定的なことばかりではなくアンチデジタルの話題も取り上げたいと考えて設定したテーマで、これに石原さんが手を挙げてくださいました。石原さんは、Scratchや機械学習の本を書いておられたり、本業がソフトウェアエンジニアなので「どっぷりデジタル」な人ですが、この仕事をする前は「オタクっぽい」などのネガティブなイメージがあったそうです。
全体の話の流れとしては「アンチデジタル」というよりも「デジタルの良いところ、アナログの良いところ」といった流れになり、共通した結論として
- デジタルは奥行きを広げるが、アナログは入り口を広げる。アナログにはセレンディピティ(なにかに偶然出会ったり、予想していないことを見つけること)がある。
- デジタルよりもアナログの方が記憶に定着しやすい。
ということが挙げられました。記憶の定着に関してはデジタルかアナログかというよりも経験した年齢によるものの影響もあるかもしれません。
本
- 子どもの頃に読んだ紙の本については記憶に残っている。
- 子どもの頃に図鑑や百科事典をなにかを調べるわけでもなくただパラパラと眺めていた中で見つけたことを今も覚えていることもたくさんある。
(私のような世代(50代)なら子どもの頃に図鑑や百科事典があった家も多かったと思います) - 図鑑や百科事典を特別な目的もなく読むようなことも多く、新しい知識に出会うことも多くあった。
- 今は百科事典の代わりにWikipediaのようなネットの情報で調べられるようになったけれど、紙の本のようにパラパラとめくって新しい情報に出会うという経験は少なくなってしまった。
- 一方で、Wikipediaにはハイパーリンクを辿っていくことで関連する情報も含めて深く知ることができるという特徴がある。
- つまり紙の本はセレンディピティを生み、デジタルの本(のようなメディア)は深い知識を得られるという特徴があるのではないかと考えられる。
地図
- 東日本断震災で交通が麻痺してしまった時、石原さんは当時の勤め先から自宅まで徒歩で帰らなければならない状況に陥ったけれど、勤め先と自宅の位置関係や経路が頭に入っていたことから、地図に頼ることなく自宅に帰ることができた。
- 一方でGoogle Mapsなどのデジタル地図を使っている息子さんは、自宅と目的地の位置関係を把握していないことも多い。
- Google Mapsなら今どこにいるかどっちに向かっているかがわかって便利な一方、地理を俯瞰的に見ることが難しくなっている。
- 紙の地図を使っていたころは目的地以外の情報を見ることも多く、自分の知っていた場所が意外と近いことを知るなど、ここにも新しい発見があった。
その他
その他にも、音楽や電話帳の例が挙げられ。
- CDやLPで音楽を聴いていた頃は、歌詞カードがついていたので歌詞を覚えられたけれど、配信になって歌詞を覚えることがなくなってしまった。
(音楽アプリでも歌詞を表示する機能はありますが配信を中心にデジタルで音楽を楽しんでいる今の世代はどうしているのでしょうね?) - 昔は電話機(家の固定電話)の近くに紙の電話帳があり、主な電話番号は覚えているものだった。
- 今は自分の家族の電話番号はおろか自分の電話番号さえも覚えていない。
- 覚えてないければ、自分のスマートフォンが使えなくなった時に
といった話題もあり、これらは「記憶への定着のしやすさ」という方向性の話でした。
まとめ
結論については冒頭に書いた通りですが、アナログにはセレンディピティがあるというのは私も実感しています。
記憶への定着については、デジタルかアナログかだけによっているわけではなく、年齢的なものやアナログの頃には「覚えなければならなかった」という状況がそうさせた部分の方が大きいかもしれません。
とはいえ、災害や電池切れなどでデジタル機器が使えなくなった時のことを考えれば、地図や電話番号などは覚えておいた方がいいのは間違いありません。
デジタルとアナログのそれぞれのメリットを考えるいい機会になりました。石原さん、ありがとうございました。
なお、元の話題とはずれますが、個人的には石原さんがGoogleの地図サービスを「グーグルマップス」と発音していたところがポイントでした。日本語表記では「Googleマップ」なんですが、英語表記は”Maps”なんですよね。
進む情報教育、端境期世代はどうしたらいい? お話してくださった方:西端さん、小崎さん
この回では「進む情報教育、端境期世代はどうしたらいい?」をテーマに、西端さんと小崎さんにお話を伺いました。
テーマ設定の背景としては、2020年度からの小学校におけるプログラミング教育必修化、GIGAスクール構想による「一人一台端末」環境の構築、中学校の技術科や高校の情報科授業の刷新など、年々「情報教育」に関する施策が展開される中で、移行タイミングの間(これを指して端境期としました)に対してはなんらかの手当を打たないといけないのではないかと考えての設定でした。
それに対して、以下のようなお話をいただきました。
そもそも、変化の速い現代においては毎年が端境期。常に変化が起こっている。
また「情報教育」といっても幅が広い、Officeの使い方からプログラミングの範囲まで色々ある。
その中で、少なくとも「情報機器の利用」に関しては、今の子どもたちは日常生活でも使っているし学校教育とは関係なく追従していけると考えるし、当人たちもそこは心配していない。
そのために私たちがやるべきこと、考えるべきことはいかに子どもたちに自由にかつ安全に使える機会を提供できるかということ。その中で自分たちでスキルを身につけていくだろう。
むしろ大変なのは、現役の教員でありこれから教員になろうとする学生たち。教員はこの変化についていく必要があり、ここが一番大変なところになるだろう。
概ね、このようなお話をしてくださいました。 あとは、若林の個人的なお悩み相談的な感じで、たとえば「私たちでできることで学校に協力があればしたいと思っている。しかし、なかなか学校に入っていくのは難しい、不審者に思われてしまう。なにか良いやり方がないか?」
これについてはお二人から
学校や教育委員会には色んな人が来る、売り込みも来るしこれを学校教育で取り入れるべきだと意見しにこられる方もいる。そんな中で入っていこうとして不審者と思われても仕方がない。一番良いのは先生から声をかけてもらうのが良いが、そのためには人間関係ができていないといけない。いきなり入っていくのではなく、PTA経由であるとか小さな活動から人間関係を作って入っていくしかないのではないかと思う。
というコメントをいただきました。納得です。
いずれも、デジタルというよりも教育よりの話になりました。
あらためて言われてみれば「そりゃそうか」と思われるお話でしたが、自分としては頭の整理になるお話で、やはり専門家の話をお聴きする機会は必要だなとあらためて思った次第です。
参加してくださった西端さんと小崎さん、ありがとうございました。
10月11日(月)
進む情報教育、端境期世代はどうしたらいい? お話してくださった方:宮島さん
準備中
「デジタル」とはなにか?「アナログ」との境目はどこ? お話してくださった方:倉本さん
準備中
主催者
本イベントの主催は、crossroads lab. の若林です。お前誰やねんという方はこちらをご覧ください