「Appleらしさ」とは

今年もまた、新しいiPhoneが発表されましたね。私の周りでも、「6の64GB」だの「Plusの128GB」だのと予約完了の声が聞こえてきますが、私は来年の春まで2年縛りが残っているので、とりあえずは様子見です。

今回の大きな変更のひとつは、なんといっても大きさ。 特にiPhone 6 Plusは、iPhoneユーザーには未知の領域で(それは言い過ぎかな)、大きさをリアルに体験できる型紙がダウンロードできるとか、一万円札71枚分の大きさに近いとか、発売前に大きさを確認するための情報が飛び交っています。その中で、一番手軽に「iPhone 6 Plus」の大きさを体感できるのが、ロッテの「ガーナチョコレート」。パッケージの大きさが、「iPhone 6 Plus」本体の大きさに近いそうです。検討中の方、是非お試しください。 ロッテ ガーナチョコレート 71万円の大金を積んで誰よりも早く「iPhone 6 Plus」の使い勝手を検証してみた 新iPhoneの大きさがわかる「型紙」をダウンロードしよう

ところで、iPhone 6発表以前は「iPhoneの大型化」を望む声が多く聞かれたのに対して、発表後は「今の方がよかった」という声も聞こえてくるようになりました。本当にユーザーというのはワガママですね。おそらく、今のところ「iPhone 6 Plus」はテストマーケティング的な位置づけでしょうから、もしかすると来年の今頃には無くなっているのかもしれません。今回の発表で、iPhone5cの後継モデルが出なかったように。

Appleらしさとは

さて、今回の発表内容も「Apple WATCH」を含め、例年と同じくリーク情報と同じものばかりで、「驚きがなかった」「Androidの真似ばかり」「Appleらしくなくなった」と言われています。しかし、「古くからのAppleファン」としてはこういった声に反論したくなるのです。

「驚きがなかった」のは、リーク情報とまったく同じ内容だったからだと思うのですが、ここまで新製品の情報が、ネット上でリークされる企業は他にはありません。これだけのリークがあるのは、ある意味「Appleらしい」。

「Androidの真似ばかり」と言われているのは、5.5インチ画面とNFCを搭載している機種がAndroidでは既に発売されているからなのですが、元々Appleは「世界初」に重きを置かない企業。むしろ既存の技術や手段を改善し、「よりよいやり方を見つけた」と発表するのが「Appleらしさ」です。 初代iPhoneにしても、タッチパネルやタッチ操作を使った「世界初」の機器ではありませんでしたし、それらを「よりよいやり方を見つけた」として昇華させた商品です。 今回発表された「Apple Pay」でも、「指紋認証を合わせることでセキュリティを強化」した点や、「複数のクレジットカードを登録可能」としたことで、サービスごとに取り扱い方法(管理アプリ)の異なる「おサイフケータイ」よりも扱いやすくなったと言えると思います。

つまり、「よりよいやり方」を見つけてきた、という点において「Appleらしい」と言えます。

Apple WATCHは「Appleらしい」か?

さて、もうひとつの大きな発表「Apple WATCH」は、「Appleらしい」製品でしょうか? 詳細が明らかになっていないので、なんとも言えないのですが、「Appleらしい」という点を強いて挙げるとするならば、既存の時計に共通の操作方法である、「竜頭」をユーザーインターフェースとして採用したことにある、と言えます。 Appleは、時として大きくモノの形を変えることで新しい体験を導入することもありますが、既存のフォームファクタを変えないことで、ユーザーを段階的に新しい世界へ誘導することが上手な企業でもあります。

「竜頭」が時計型ウェアラブルデバイスのインターフェースとして最適かどうか、については議論の余地がありますが、これは実物をみてみないことにはなんとも言えません。発表時点で酷評されていても、いざ製品を手にしてみると賞賛を得ることがある、というのも「Appleらしさ」のひとつですから。

one more thing…

しかし、今回の発表にAppleの焦りが見えるのも事実です。「Apple WATCH」の発表の仕方は、「iPhone」発表時を思い起こさせる演出でしたが、「Apple WATCH」の発表が「iPhone」発表時ほどの感動を産んだか?というと、必ずしもそうではないと思います。

また、製品やサービス名に”i”を使う慣習をやめたり、プレゼンの方法も各担当者に任せるなど「Steve Jobs色」を排しているわりには、Steve Jobsが使っていた「one more thing…」を使うなど、ちぐはぐな面もあります。

Appleのブランド力低下が言われて久しく、株価にもそれが現れています。 ブランドとは、「自分の価値を発信し、価値に対して顧客に期待を得て、その期待に応える」というコミュニケーションで成立するものです。 しかし、Appleほどになると「Appleらしさ」を周囲が勝手に発信することも多く、それらがノイズになってしまって、Apple自身が自社のブランドをコントロールできなくなってしまっている。これが、今のAppleの一番辛いところなのでしょう。 という私も、勝手な解釈で「Appleらしさ」を語っているひとりなのですが…。

それでも、Appleほどの完成度のモノや体験を提供できる企業は多くありませんし、それを楽しみにしているファンが多いのも事実。これからもAppleには、より「Appleらしい」製品やサービスを産み出してもらいたいものですね。