三宅ビジョン発表会に参加しました
2021年3月6日、文化ホールで開催された「三宅ビジョン発表会」に参加してきました。この会は「第2期三宅町まち・ひと・しごと創生総合戦略」と題した資料にそって進められたので、この記事でもこの資料の内容をもとに考えたことをまとめてみたいと思います。
資料については、三宅町のwebサイトに掲載されています。
第2期三宅町まち・ひと・しごと創生総合戦略の内容
第2期三宅町まち・ひと・しごと創生総合戦略は、ビジョンと現状分析、4つの基本目標とそれぞれのKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)とそれらを補足する考え方や背景などで構成されています。
4つの基本目標の内容は以下の通りです、KPIについては資料を読んでいただいた方が良いと思いますので、ここでは割愛します。
- ひともまちも元気になる仕組みづくり
- まちぐるみで子どもを育てる仕組みづくり
- 次世代につなぐ仕事の仕組みづくり
- シビックプライドを醸成する情報発信・共有の仕組みづくり
全体の印象
「第2期三宅町まち・ひと・しごと創生総合戦略」の全体的な印象としては特に可もなく不可もなしというのが正直なところです。ひとつひとつの項目に新しいものがあるわけではなく「うん、そうやんな」って感じではあります。これは批判的な意味ではなくて、そのままの意味です。
強いて言うならば「シビックプライド」や「KPI」といった言葉を積極的に取りこんだところは一定の評価ができると思います。もちろん新しい言葉を使うことが新しいこをやっていることと直結するわけではありませんが、とはいえ今まで使ったことがない言葉を行政の公式の資料で使っていく姿勢には一定の評価があっても良いと私は思います。
質疑でお話しさせていただいたことその1
その上で、当日の質疑の時間に「KPIの目標値が低い」ということをお話しさせていただきました。
たとえば、基本目標2「まちぐるみで子どもを育てる仕組みづくり」のKPIのひとつに「三宅幼児園の満足度を70.3%(2020年)を75%(2027年)に引き上げる」というものがあります。そもそも「満足度」というのをどのように数値かするのか?がポイントになりますが、私は在園児や卒園児の保護者に対して「三宅幼児園の保育はいかがでしたか?」といったアンケートを取ることをイメージしました(当日の話の中にもアンケートという言葉が何度か出てきたからです)。
この設問に対して「とてもよかった、よかった、どちらでもない、よくなかった、悪かった」という5つの選択肢を用意して答えていただくようなものです。
KPIで示されている「三宅幼児園の満足度」を、とてもよかった、よかったを選んだ人の数だとすれば、現在は100人中70人が「とてもよかった、よかった」と答えているけれど、それを2027年に75人にする、ということではないかと私は思いました。勝手な想像なので違うかもしれません、もっと他の評価方法かもしれませんが、それほど大きくは違わないのではないかというのが私の見立てです。
もしそうだとすると、7年間で70人から75人に増やすというのは「三宅幼児園の職員の目標」であればいいのかもしれませんが(それでも低いと思いますが)「町が示すビジョンを達成するための総合戦略」の中で示すものとしては少し小さすぎないか?という思いです。
じゃ、80だったらいいのか?90だったら合格か?そういう話ではありません。そもそも「三宅幼児園の満足度」という項目設定そのものが小さすぎるということです。
質疑でお話しさせていただいたことその2
KPIについては、もうひとつ基本目標3のKPI「MiiMoなどを活用した起業・創業事例を2027年までに延べ3件創出する」というのがありました、こちらも低すぎると感じています。
こちらも「何をもって起業・創業とするのか?」がポイントになります。資本金いくら以上の株式会社が三宅町で登記されたらなのか、個人事業主での開業事例も含むのかによって規模感が大きく変わります。
近年、会社を辞めて個人事業主として独立・開業する人は増えています。昨年来の感染症拡大の影響による働き方、生き方の変化がそれを加速させているというのが私の実感です。私の身の回りでもそういう人が増えています。
たしかに三宅町は人口の少ない町ではありますが、それでも若い方の中には同じような動きをしている方が一定数いらっしゃると思います。行政が何もしなくても年にひとりぐらいは独立開業される方もいらっしゃるでしょう。
個人事業主相当の起業・創業も含むのであれば7年間で3件はあまりにも少なすぎます、現在の社会情勢を低く評価しすぎです。しかも「延べ」がついてます。これは「もし達成できなかったらひとりの人にいくつかやってもらおう」という保険のつもりのように見えるのは、あまりにもうがった見方が過ぎるでしょうか?
こちらについては、指標の項目としては良いと思うのですが、目標値の認識に現在の社会の流れが反映されていないように思います。
これからのコミュニケーションが重要
と、質疑で話した内容は否定的と取られたかもしれませんが、そんなつもりはありません。以下は当日お話できなかった内容です。
少なくとも2021年3月6日の時点ではこれで良いと私は思っています。これはまだあくまでも「たたき台」なんです。
今後、重要になるのは「KPIは指標であって、目標ではない」ということ。重要なのは目標、KPIはそれを評価するためのものさしでしかないのです。
「この目標を達成できた状態であれば、たとえばこういうことが起こってるはずだよね」というのが指標(KPI)なんです。なので、今後進めていくにつれてKPIの見直しも必要になるかもしれない。KPIが達成されていないから、KPIを達成するためのことをやるとか、最初に決めたKPIのまま2027年まで突き進む必要もないんです。
繰り返しますが「この目標を達成できた状態であれば、たとえばこういうことが起こってるはずだよね」を具体化したのが指標(KPI)。なので、進めていくうちに「この指標では評価できないかもしれない」ということが持ち上がってくるかもしれない。
「計画」というのは「この目標を達成するには、こうやっていけばいいはずだ」という「仮説」です。でも、実際やってみたら仮説通りじゃなかったということもある。それでええんです。仮説通りじゃなかったことがわかったということは、他の仮説を新たに立てる必要があることに気づいたということと、新しい仮説を立てるための材料を得たということなんです。
だからKPIを守り続けるのではなく、見直し続けることが必要。
従来のやり方では、ここに固執してしまいがち。行政は最初に掲げた指標を守ろうとするし、住民は「最初に決めたことを勝手に変えるな」という。
もちろん目標を変えたら「ちょーまて」って言わなければなりませんが、指標は変わってもいいんです。その目標の達成度を適切に評価する指標や目標値が見つかったらそれを適用していけばいい。
そのためには行政と住民の更なるコミュニケーションが必要(やってここにたどり着いた、長かった)。住民も行政も最初に掲げた指標を守ることが重要ではないという認識のもとに「じゃ、何が適切な指標なのか」ということを議論し続けることが重要なんです。
町にお願いしたいこと
今後、このコミュニケーションを円滑に進めていくにあたって、今回のような会で使われる資料の事前配布を行政サイドにはお願いしたい。
初見の資料、初めて聞く話をもとに適切な質疑は難しいです。後から「あれを言っておけばよかった」「正しく伝えられなかった」と思うことが多々あります。それによって「変なツッコミ」をされないというメリットもあると思います。
こういったこともコミュニケーションを円滑にする上で重要なひとつのアクションだと私は思います。