モードを意識するインターフェース
先日、優れたインターフェース」ひとつが「モードを意識させないインターフェース」であるということを書きましたが、今回は「モードを意識させるインターフェース」です。
「モードを意識させない」が、利用者の負担を軽くし使いやすくする、ということはイメージしやすいと思うのですが、あえて垣根を作り、モードを意識させた方が、利用者の負担を軽くすることもあるのです。
人間と人間の間にモードを作る
そのひとつが、SkypeやiPhoneのiMessageのような「メッセージアプリ」にみられる「入力中表示」。
「入力中表示」とは、文字入力を始めると相手側に空の吹き出しを表示したり、「◯◯さんが入力しています」といった表示をして、相手が入力途中であることを、知らせてくれる表示。
これによって、「あ、何か送ってくるんだな、じゃちょっと待ってるか」と相手のメッセージが届くのを待つことができます。
つまり、「入力中」の表示を見た方は「待ちモード」に入ったわけです。そしてメッセージを受け取った後に返信の入力を始めると、相手側が「入力中」を見て「待ちモード」に入る。この繰り返しで、メッセージのやり取りをスムーズに進められます。
もし、「入力中」表示がなかったら、お互い相手の状態が分からずにメッセージを送りあい、行き違いを繰り返した末に話はまったく進まず、ストレスは溜まる一方になるでしょう。
「入力中」表示は、モードを受け渡しするための合図になっている、良い「モードを意識させるインターフェース」のひとつです。
人間と機械の間にモードを作る
人間と機械の間の「モード」は、世の中にたくさんあります。それらは、機械を使いにくくしていることがほとんどです。その中でも、「モードを意識させる」ことで使いやすくしている例として、「電気ポットのロック解除ボタン」が挙げられます。
電気ポットは、まず「ロック解除ボタン」を押し、その後「給湯ボタン」を押すとお湯が出るようになっていますね。これは、説明するまでもなく誤って熱湯を出してしまわないようにするための仕組み。普段は「ロックモード」で、お湯を出す時だけ「給湯モード」に変えさせているのです。
お湯を出す目的では使いにくくしているわけですが、うっかり押してやけどをする心配がない、小さな子どものいる家庭でも安心して使える「優れたインターフェース」のひとつであると言えます。
象印のポットの取扱説明書からの引用です
モードと上手くつきあう
モードはなければない方がいい。でも、機能が多くなればモードが増えるのは避けられない。 幸い、「モードを意識させない」でも「モードを意識させる」でも、優れたインターフェースを作ることはできるのです。 無理にモードをなくそうとするよりは、モードと上手くつきあうことで、今よりもっと使いやすいものにできるのです。