生成的人工知能が人間の創造性を加速する

2022年に登場したMidjourneyStableDiffusionのような画像生成AIに始まり、続いて11月のChatGPT登場でテレビのニュースや情報番組でも取り上げられるようになって生成的人工知能(Generative AI)が広く認知されるようになりましたね。

「すげー」「おもしれー」という声がある一方で「人工知能がここまでできるようになったら、人間がやるべきことは何なのか」といった不安の声もあります。

大丈夫、心配ありません。人工知能がどれだけ発達しても人間がやるべきことは変わらないのですが、この記事ではそのことについて述べてみます。

自分のやりたいことを考える

結論としては、人間がやるべきことは「自分がやりたいことを考える」ことです。そして、やりたいことの中から自分がどれをやるかを決めること。

もしかしたら、将来さらに人工知能が進化したり形が変わったりして、それすらも人工知能がやることになるのかもしれないけれど、少なくとも今までも現時点でも人間がやるべきことは「自分がやりたいことを考える」であることは間違いありません。

そしてそれすら人工知能がやるようになったら、その時こそ人間の存在意義はなくなるのでしょう。ただ、人間が存在しない世界には人工知能も存在する意義がなくなるので(人間以外の動物と共存する/できるのであれば話は別)人間の存在意義がなくなるところまで進化することはないのでは?というのが私の考え方です。

人間が「これをやりたい」ということを思いついて人工知能に伝えれば代わりにやってくれる。もし人工知能がそれを完成させたら(現時点ではまだ人間による手直しの必要なことが多いですが)人間はまた次の「これをやりたい」を考えられる。今まで以上にやりたいことができる、すごくいい世界じゃないですか。

やる気よりできる気

私は普段から「人が何かをやろうとする時、必要ななのはやる気じゃなくてできる気だ」と話しています。

人が何かをやる時に「やる気」は必要ですが「やる気」ってなかなか難しいですよね、褒められたりいいことがあると「やる気」は生まれるけど、それはちょっとしたことですぐに消えてしまう。「やる気」をコントロールするのは難しい。

「やる気」を生むために必要なのは、それが「できそう」「やれそう」と思うことなのです。「できそう」「やれそう」と思えないことに「やる気」なんて生まれない

多くの場合、自分が「やろう」と思っていることは「できそう」「やれそう」と思っているものです。なので「できそうと思う気持ち = できる気」が必要という理屈。

たとえば「できる気」を生むひとつの方法として、目標を小さく分解するというのがあります。大きな目標(ゴール)はできそうな気がしないかもしれないけれど、そこに行き着くためのステップを区切ってひとつひとつのステップを目標にすれば「できそう」に思えますよね。このように目標を分解するのは「できる気」を生むひとつの方法です。

話が少しそれましたが、私はGenarative AIも人間の「できる気」を生むひとつの装置として機能するのではないかと考えています。とりあえず思いついたことをChatGPTに投げてみる、そのものズバリの答えがでなくても手がかりは出てくるかもしれない。それに対して、また投げかける。その繰り返しをしていくうちに「どうやったらできそうか」が見えてきて「できる気」が生まれてくると思います。

人工知能に分解させる

大きな目標を分解することは「できる気」を生むひとつの方法です。では、それを人工知能にやらせてはどうでしょう。

「私は〜ということをやりたいと思っています。これを達成するためにやるべきことを5段階ぐらいで分解してみて」

ChatGPTに伝えれば、すらすらと箇条書きでやるべきことを挙げてくれるでしょう。これも本来は自分でやらないといけないことでしたが、人工知能が代わりにやってくれるなら任せればよいのです。

そして、分解されたステップの中でさらに人工知能にやってもらえそうなことがあれば、それも人工知能に依頼する。どうしても人間じゃないとできない部分を仕方がないので人間がやってあげる。そんな関係性で人工知能とペアで自分のやりたいことを達成できる。ちょっといい未来が見えてきませんか?

やりたいことがないんじゃない

「いやいや、そんなこと言ってもやりたいことなんて見つからないんだよ」という方もいらっしゃるかもしれません。

確かに「何をやったらいいのかわからない」という声を聞くこともよくあります。

でも、本当にそうなんでしょうか?実はやりたいことはあるんじゃないですか?それを考えているうちに「でも、今考えていることは難しいし、面倒だしどうせ無理だろうなぁ」と無意識のうちに思い込んでアイデアにフタをしてしまっているのかもしれません。

無意識のうちにやってしまっていることを変えるのはなかなか難しいですが「もしかしたらできないと決めつけているかもしれない」ということを少し頭の片隅においてみてはどうでしょう。そうすると、今まで無かったと思っていたやりたいことが見えてくるかもしれません。

それが見つかれば、あとはすっごい賢い人工知能が代わりにやってくれるのだから大丈夫ですよ。全部をやってくれなくてもかなりの部分を人工知能が助けてくれるんです。いい時代になりましたよ。

知の自転車”Bicycle for the Mind”

かつて、Appleの創業者Steve Jobsはコンピュータのことを「知の自転車”Bicycle for the Mind”」と表現しました。コンピュータは人間の知性を拡張する道具であるという意味です。今まで足で歩いていた人類が、自転車を使うことでより速く遠くに行けるようになったように、コンピュータを使えばより複雑なことをより速くできるようになったのです。

Genarative AIもまさしく知の自転車のひとつ。人類はこんな便利な道具を手に入れたことで、さらに遠くへさらに速く行けるようになったんです、そう思ったらワクワクしませんか?

現時点(2023年)のGenerative AIはまだまだ不完全なことが多く、鵜呑みにできないことも多くあります。だからこそ、人間が道具としてうまく使ってあげないといけない。今までの自転車よりもより速く動く分、取り扱いが厄介かもしれません。

せっかく手に入れたこの自転車、うまく使ってより速く未来へ行ってみたいものです。

What a computer is to me, is it’s the most remarkable tool we’ve ever come up with. It’s the equivalent of a bicycle for our minds.

初出時、”Generative AI”を「創造的人工知能」としておりましたが「生成的人工知能」に変更しました。