アバター社会の課題
先日、久しぶりにあった友人がアバター社会の創出(でいいのか)の活動をしているということで、自分がぼんやりと考えていることを話してみたら、同じようなことを考えている方がいらっしゃると聞いたので、自分が考えていることをまとめてみることにした。
アバター社会への期待
メタバースについて話すと、多くの学生の期待は「自分の見た目を変えられること」といいます。つまり、アバター化ですね。みんな自分の外見にコンプレックスを持っているのか、自分を曝け出すのが恥ずかしいのか、アニメや漫画のキャラになりたいのか、外見を変えたいと言います。
たしかに、外見を変えられれば面白いとは思うのですが、よくよく考えると色々な問題があることがわかります。
以下メタバースという言葉がでてきますが、メタバースそのものがやや曖昧なので、ここではゲームでもどんなものでも構いません、オンラインでどこからでも参加できるところと仮定します。また、個体を識別する手段としてはアバターの外見のみとします、これは私たちが今暮らしている世界と同じで、普通は誰かをその外見で判断しているからです(名札を下げていたり、幟を立てている人はいませんからね)
外見以外での本人確認の必要性
外見を変えられるということは、ある時はいつも使っているものと違うアバターを使ってメタバースに参加している可能性があります。 ある時、メタバースに入ってみたらいつもいる友人がいない。今日はいないのか、と思っていたら全然しらないアバターに声をかけられてその友人だったことに気づく、といったことが起こります。
それだけならまだしも、本人がいないと思ってうっかりその人の悪口をしゃべったりしたら、とんでもないことになります(まぁ、悪口を言ってる時点で人間関係はよくないのでしょうけれど)。
また、悪意をもって他人の誰かになりすますケースも考えられますね。いつも仲良くしている友人だと思ってプライベートなことを話していたら全然別人だった、ということも起こりかねません。
今、自分が会いたい人がどこにいるのか、話している人が誰なのかを外見で判断できないとこのようなことが起こります。
これらについての解決策を考えてみました、外見以外で確認する方法が提供されていればいいわけです。 メタバースの中でアバターの上に常に名前やIDなどその人を特定する情報が表示されていれば良いかもしれません。そうすれば、外見に頼らず本人を確認できるので、相手がみつからなかったり、なりすましで騙されることもなくなりそうです。
そういったユーザーインターフェースを提供しているメタバースサービスもあったように記憶しています。
プライバシー保護
ただ、クローズドなメタバースであればそれでもいいかもしれませんが、メタバースというものが一般に広く普及し不特定多数の人々が行き交うような場所になったとしたら、全然知らない誰かに自分の情報を知られてしまう可能性があります。 それはちょっと困るので、本当親しくしている人、接点がある人だけにしたいですよね。
この課題については、SNSで使われている鍵アカウントのような仕組みでの解決が考えられます。つまり、承認した人だけが自分の情報をみられるようにするというものです。これが実現できれば、全然知らない誰かに自分の情報が知られてしまうということは防げます。
知られない権利
一方で、自分の存在を隠したいという欲求もあるはずです。何もかもがデジタルで実現されたメタバースの中であれば、あなたを検索して見つけることができるようになるかもしれません。 それはそれで便利なのですが、自分の存在を知られたくないこともあるでしょう。変装して飲んでる、そんな感じです(わかりにくい)。いずれにせよ、いつでもどこでも親しい人からには居場所が知られている、それはそれで窮屈です。
そこで、親しい人やすでに繋がりのある人からも自分の存在を見えなくする機能は必要になると考えられます。自分の存在を見せるか見せないかを選択できるようにできればこの課題は解決できそうです。
犯罪利用のリスクと対策
でも、そうすると逆にそれを利用して悪いことに使う人がでてくるかもしれません。自分の正体を隠して犯罪行為ができてしまう。メタバースがそんな環境になることは多くの方が望む状況ではないはず。 こういったことを防ぐために、警察のような特定の組織のみに限定して存在情報を見たりトレースできる工夫が必要になりそうです。
個人情報保護との兼ね合いで技術的な面以外の部分がかなり難しくなりそうですが、何かしらの解決方法が必要そうです。
どこが(誰が)それらの機能を提供すべきか
ここまでに書いた本人認証、確認、トレースの仕組みを誰がどのように「責任をもって」提供するのか?ということも考えていかなければならないのですが、日本国内であればマイナンバー、アメリカならSocial Security number(SSN)みたいなことになるのかなと思いますが、インターネットの世界は国境は関係ありませんからパスポートやビザ(査証)に相当する仕組みが必要になりそうです。
最後に
ここまでの話をまとめると、
- アバター社会において自分の見た目を変えられることを期待している人が若い人には一定数いる。
- 見た目がコロコロ変わるのであれば、見た目では誰かを判断できくなるので別の確認方法が必要。
- それは誰もが見られるのではなく、自分が許可した特定の人だけが見られる。
- その人さえも、見られないようにもできる。自分の存在は自分でコントロールできる。
- そういった機能が犯罪など悪意のある目的に使われる可能性もでてくるので警察などの機関はそれをオーバーライドもしくはトレースできなければならないか。
- これらの機能を誰が(どこが)提供するのかをインターネットワイドで考える必要がある。
と考えられます。
あまりまとまった話じゃなくてすみません。でも、これ面白いテーマだと思うんですよね。学生に研究テーマとして勧めたことがあるけれど、相手にされませんでした。
ちなみに、私は自分の見た目よりも自分から見た周りの見た目を自由に変えられる方がうれしいです。 :D