触れないものを触れるようにするインターフェース
前回、DVDやLightningケーブルのように、記録面や接点が露出しているデリケートなメディアを嫌がる自分は、新種のデジタルディバイドなのかな? ということを書きましたが、今回はその続きです。
取り扱いしにくいメディアがある一方で、その心配のないメディアの答えは既に出ていて、それが「ネット配信」であったり、ハードディスクのような「大容量メディア」だったりします。「ネット配信」だったらそもそも物理的なメディアが存在しませんし、「大容量メディア」は取り出すことがないので、うっかり壊してしまう心配はありません。
なるほど、全部ネット配信にして、ダウンロードで取り込めるようになれば解決か? というと、うっかり消してしまう恐れやたくさんのデータを一覧できないなど、それはそれで使いにくい面もあります。そもそも、何もかもが画面の向こう側にある状態が、元々のデジタルディバイドという状態を産み出しているわけで、それで解決と言うのも本末転倒。 そんなことをあれこれ考えていたら、10年以上前にも同じことを考えていたことを思い出しました。
遡ること約15年前
1998年~2000年頃の話です。当時テレビチューナーを搭載したパソコンが流行った時期があり、パソコンでハードディスクに録画するという機能がいくつかのモデルで実現されていました。
まだハードディスクレコーダーが普及する前でしたが、私もそういった商品の開発に携わったこともあって、「将来的にはハードディスクに録画するということが一般的になるんだろうなぁ」とは思っていました。
ただ、今までVHSテープで録画をしてきた方々が、いきなり「テープは要りません、録画は全部機械の中にあって画面で操作してくださいね」と言われてついて来られるのだろうか? というのは気になっていました。
もう少し段階を踏む必要があるんじゃないか? たとえば、機械の中のデータをバーコードで管理できるようにすれば、もう少しなじみやすくなるんじゃないか?と。
- 録画した番組に固有のIDを機械が自動的に割り付ける。
- そのIDをバーコードにしたものを内蔵のプリンタ(感熱プリンタをイメージ)で印刷する。
- 印刷されたバーコードを、専用にデザインされた樹脂製の板のようなものに貼る。
- 録画した番組を見るときは、バーコードを本体もしくはリモコンのバーコードリーダーにかざすとその番組が即座に呼び出されて観ることができる。画面上の操作は一切不要。
こういう形であれば、今までテープで管理していたの同じようにモノで扱うことができて、大容量メディアのメリット(入れ忘れがない、間違って上書きしない)も生かすことができます。
たとえば、いつも決まった番組を見たい子どもやお年寄りなどには、その番組用のバーコードを渡しておけば、機械の操作を覚えなくても簡単に扱うことができて、間違って消してしまう心配もありません。
というアイデアは出してみたものの、ビデオにプリンタを載せるとなると大幅なコストアップになりますし、PCと連携させてPCのプリンタで作るとなると、「そこまでやるかなぁ?」ということになるので、実際には製品化まで押すことは難しいものでした。
でも、それを製品化したメーカーもありました。SONYさんです。型番を忘れてしまって、あらためて検索してみたのですが見つかりませんでしたが、その頃のVAIOで動画を管理するソフトにバーコード(QRコードだったかも)で観たい動画を呼び出す機能が搭載されたことがありました。あの時は悔しいような、「おぉ、天下のSONYが自分と同じアイデアをやってきた!」と嬉しいような微妙な感覚でしたね。
今でこそ、VAIOといえばノートパソコンのブランドですが、その頃はタワー型のテレビの録画や動画編集などのマルチメディア機能(これも死語ですが)メインのモデルもあったのです。
現代に戻る
昔話を書いてみましたが、今でもそれほど悪くはないアイデアなんじゃないかな?と思っています。あまり普及はしていませんが、iOSに搭載されているPassbookだとか、無印良品の”MUJI Passport”アプリでも画面上のバーコードを読み取るようになっていますので、芽はあると思います。
個人的には、POSやレジスタの開発を長らくやっていたこともあって、バーコードにはそこそこ愛着があるのですが、とはいえ今更バーコードでもないので、これからはもっとモダンなインターフェース、たとえば音声認識が有望なのかもしれません。ということで、次回は音声認識を使ったインターフェースについて書いてみたいと思います。